年が明けて気持ちも新たになるこの時期、「今年こそ何か新しいことを始めたい」と思っている方も多いのではないでしょうか。今回は少し趣向を変えて、私がチョコレート作りを本業にするまでの道のりと、これから目指していることについてお話しさせていただきます。お菓子作りが好きな方、キャリアチェンジを考えている方に、少しでも参考になれば嬉しいです。

カカオ豆の価格がようやく落ち着いてきた話


本題に入る前に、チョコレート好きの皆さんにとって気になるニュースから。ここ数年、チョコレートの値上がりが話題になっていましたよね。実はカカオ豆の価格は、ニューヨークの先物取引所で決められています。農家さんが決めるわけではないんです。

2023年5月頃までは1キロあたり約2.5ドルだったカカオ豆の取引価格が、2025年1月の時点では1キロあたり10ドルを超えてしまいました。円安も重なって、4倍以上の値上がりです。いわゆる「カカオショック」と呼ばれた現象ですね。

近所のスーパーで130グラムくらいのハイカカオチョコレート菓子が1個800円超えていて、「ちゃんと4倍になってる......」と思わず苦笑いしてしまいました。スーパーのチョコにしてはなかなかのお値段ですよね。



ただ、嬉しいことに先月の時点でカカオ豆の価格は5ドル台まで下がってきています。投資家の動きで一時的に価格が跳ね上がっていた部分もあったようで、ようやく落ち着きを取り戻しつつあります。もちろん、一度上がった物価はなかなか下がらないのが現実ですが、少しずつチョコレートの価格にも反映されてくることを期待したいところです。

食品科学との出会い――チョコレートの「科学」に魅せられて




私のバックグラウンドを知ると、意外に思われる方が多いかもしれません。実は、パティシエの専門学校出身ではなく、大学では食品科学を専攻していました。

在籍していた研究室は企業との共同研究が盛んなところで、その授業の一環でカカオバターについて学ぶ機会がありました。カカオバターというのは、非常に特殊な性質を持った油脂なんです。

💡 ポイント

カカオバターは他の油脂にはない独特の結晶構造を持っており、チョコレートのなめらかな口溶けやパキッとした食感を生み出す鍵となっています。この特殊な性質を理解することが、美味しいチョコレート作りの土台になります。



「なんて面白い性質を持った油なんだろう」と感じたあの頃の興味が、まさか将来の仕事につながるとは、当時の私には想像もつきませんでした。

二足のわらじ時代――会社員とお菓子教室の両立


大学卒業後は、お菓子の道ではなく製薬会社に就職しました。何度か転職はしましたが、ずっと製薬業界の中でのキャリアを積んでいました。ただ、お菓子作りはずっと趣味として続けていたんです。

やがて製薬会社で会社員をしながら、お菓子教室を開くようになりました。菓子製造許可を取得したキッチンは持っていなかったので、製造販売はできません。でも教室という形なら始められる。そんなふうに「二足のわらじ」で走り続けていた時期が長くありました。

仕事は大変でもお菓子教室は本当に楽しくて、「なんとなくいい感じに両立できてるかな」と思っていたんですよね。でも、その均衡を崩す出来事がやってきました。



「小1の壁」が教えてくれた本当に大切なこと


お子さんがいらっしゃる方なら共感していただけると思いますが、いわゆる「小1の壁」は本当に大きかったです。

長男が小学1年生になった時のこと。保育園時代は0歳から預けてフルタイムで働いていましたが、保育園に安心してお任せする夏休みと、小学校の夏休みはまったく別物でした。周りのお友達がお休みなのに、自分だけ毎日学童に行く。息子も「なんで夏休みなのに僕は毎日行くの?」と言い始めるようになりました。

その時、はっきりと感じたんです。「私が願った家族の時間って、これじゃない」と。一生懸命働いて、子どもがつまらなそうに学童に1ヶ月通う生活は、私が思い描いていたものとは違いました。

理想の働き方との出会い


ちょうどその頃、チョコレート講座の第一期生の中に、超ベテランのお料理教室の先生がいらっしゃいました。その先生は毎年8月を丸々1ヶ月お休みにして、9月から7月までを一生懸命働くというスタイルを取っていたんです。

「私が理想とする働き方は、まさにこれだ」と思いました。

9月から7月まで全力で働いて、8月は丸ごとお休みにして子どもたちとしっかり過ごす。お菓子作りがずっと好きで続けてきたからこそ、この道で独立できるかもしれない。そう決意したのが今から約2年半前のことです。

💡 ポイント

独立を決意してから実際に退職するまでには時間がかかります。特に長く勤めた会社を辞める場合は、引き継ぎや準備期間も含めて計画的に進めることが大切です。焦らず、しっかり準備期間を設けましょう。



独立して1年――変わったこと、気づいたこと


会社を退職してチョコレート一本の生活になり、丸1年が経ちました。たくさんの受講生さんに恵まれ、充実した毎日を過ごしています。

子どもたちとの夏休みも、しっかり一緒に過ごせるようになりました。でも、それ以上に大きかったのは「変なストレスがなくなった」ということかもしれません。

もちろん責任感はものすごくあります。でも、変に追い込まれる感じがなくなったんですよね。自分の性格が穏やかになったなと感じます。ただ、もともと家から出ない性格なのに、一人で働くようになってますます出なくなってしまったので、今年の1月から毎日5分のトランポリン体操を始めました。



日本のキャリアチェンジについて思うこと




独立してみて改めて感じるのは、日本ではキャリアチェンジがまだまだ難しいということです。

転職はできても、それは同じ業界内での「転社」であることがほとんど。私自身も、製薬会社を何度か変わりましたが、結局ずっと製薬業界にいました。一度キャリアを離れると、なかなか元のポジションには戻れないという現実があります。

特にお子さんがいる方は、小さいうちは一緒にいてあげたいという気持ちがある。でも、いざ社会復帰となると、ブランクがあることで以前とは違う働き方を余儀なくされることも少なくありません。

私はオーストラリアに2年間住んでいたことがあるのですが、現地のカレッジに通っていた時、子育てを終えたお母さんたちがたくさん学び直しに来ていたんです。クラスメイトに必ず2、3人は年配の方がいて、「ここで1年間新しいスキルを身につけて、この仕事に就くの」と話してくれる。その姿がとても素敵でした。

日本もそうなったらいいのに、と心から思っています。私がチョコレートの技術を身につけるまでには、本当にいろんなところで勉強しました。ひとつにまとまった学びの場がなかったので、あちこちで学んだことを今ようやくまとめている段階です。だからこそ、私の講座が誰かのキャリアチェンジやキャリアアップの一歩になれたら嬉しいなと思いながら、日々教えています。



私の夢――ラスベガスのパティスリーアカデミーへ


最後に、今の私の夢、というより「野望」をお話しさせてください。

今一番行きたいと思っている学校があります。アメリカのラスベガスにある「パティスリーアカデミー」です。この学校を運営しているのは、アモーリ・ギションさんという方。インスタグラムのフォロワー数がおそらく世界一のパティシエで、4年に1回開催されるチョコレート世界大会の審査委員長も務めている、30代の若き巨匠です。

このアカデミーでは、7週間のプログラムでお菓子の素人がレストランのスーシェフ(料理長の次のポジション)レベルにまで成長できるというカリキュラムが組まれています。

💡 ポイント

海外の製菓学校では、短期間で集中的に学べるプログラムが充実しています。日本にいながらオンラインで情報を集めたり、短期留学という形で技術を学んだりする選択肢も増えてきているので、興味がある方はぜひ調べてみてください。



今はまだ子どもたちが小さいので(来年で小学4年生と1年生)、7週間家を空けるのは難しい状況です。でも、下の子が3年生くらいになったら挑戦したいと考えています。そこで学んだことを日本に持ち帰って、お菓子の分野でキャリアチェンジしたい人が「ここに行けば大丈夫」と思えるような場所を作りたい。それが今の私の大きな目標です。

まとめ


振り返ってみると、大学時代にカカオバターの面白さに触れたこと、ずっとお菓子作りを趣味として続けていたこと、小1の壁にぶつかったこと、理想の働き方をしている先生に出会ったこと。すべてが少しずつつながって、今のチョコレート講師という仕事にたどり着きました。

キャリアチェンジは確かに勇気がいります。でも、好きなことをコツコツ続けていれば、いつかそれが仕事になる可能性は十分にあります。大切なのは、「自分がどんな生活を送りたいのか」をはっきりとイメージすること。私の場合は「夏休みに子どもとしっかり過ごしたい」というシンプルな願いが、背中を押してくれました。

チョコレートはギフトとしても大変喜ばれるお菓子です。生菓子よりも日持ちがしますし、高価格帯でもお客様に受け入れていただきやすいという特徴もあります。もうすぐバレンタインですので、ぜひ手作りチョコレートに挑戦してみてくださいね。

今年も一緒に、チョコレート作りを楽しんでいきましょう。

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